これまでの記事では、財務情報と非財務情報のコネクティビティがなぜ重要なのか、そして従来型の統計分析とAI・機械学習モデルを活用した財務・非財務データ分析にはどのような違いがあるのかを整理してきました。
では、実際の統合報告書では、財務・非財務データ分析はどのように活用されているのでしょうか。
本記事では、弊社がデータ分析を担当したオムロン株式会社が公表した「統合レポート2023」における開示を、財務・非財務コネクティビティ開示の先行事例として取り上げます。
なお、本記事は、2023年当時の統合レポートに記載された内容をもとに、財務・非財務データ分析の実務上の示唆を整理するものです。2026年7月時点では、同社は継続的にデータ分析を実施し、翌年度以降も統合レポートも公表していますが、本稿では、人的資本指標とROICの関係性を可視化した2023年版の取り組みに焦点を当てます。特定企業の投資判断や将来業績を評価するものではありません。
オムロンは、統合レポート2023において「財務情報と非財務情報のコネクティビティ(結合性)への挑戦」を編集上の特色のひとつに位置づけ、人財施策の成果指標と財務指標の相関関係を仮説検証しています。統合レポート2023の発行にあたって、同社は人的資本可視化指針の公表を受け、「サステナビリティ」セクションにおいて人財施策の成果指標と財務指標の相関関係を仮説検証したこと、また重要なマテリアリティであることが確認された指標については「ピープル」セクションで詳述したことを説明しています。
なお、本記事で紹介する分析結果は、特定の人的資本施策が将来の財務成果を保証することを示すものではありません。また、本稿はオムロンが公表している統合レポート2023の記載をもとに、外部から読み取れる範囲で実務上の示唆を整理するものです。
なぜ、オムロンは人的資本とROICの関係を検証したのか
オムロンの統合レポート2023では、人的資本の活用が財務指標にどのようなインパクトを与え、企業価値に転換していくのかを紐解くために、中期経営計画「SF 1st Stage」(2022-2024)で掲げるD&I推進施策のマテリアリティとしての妥当性と、財務指標とのコネクティビティを仮説検証したと説明されています。
ここで重要なのは、単に「人的資本が大切です」と語るのではなく、人的資本施策が財務指標とどのように関係しているのかを、データ分析によって確かめようとしている点です。
人的資本経営の文脈では、女性管理職比率、従業員エンゲージメント、人材開発投資、多様な働き方など、多くのKPIが設定されます。しかし、それらの指標が企業価値にどのように関係するのかを説明することは容易ではありません。
たとえば、女性管理職比率を高めることは、ダイバーシティ推進の観点から重要です。しかし、それがどのような経路で収益性や資本効率に影響するのかを説明できなければ、投資家との対話においては「よい取り組みだが、企業価値との関係が見えにくい」という評価にとどまる可能性があります。
オムロンの取り組みは、この課題に対して、人的資本指標とROICを構成する財務指標との関係性を可視化しようとしたものです。
分析目的に応じて、ROICを構成する要素に分解して見る
オムロンは、仮説検証にあたって、2022年8月公表の内閣府「人的資本可視化指針」で示されたROIC逆ツリーの考え方を参照しています。
出典:非財務情報可視化研究会「人的資本可視化指針」(2022年8月公表版)
具体的には、オムロンの分析では、ROICそのものを一つの指標として扱うだけでなく、ROICをROS=売上高営業利益率と投下資本回転率に分解し、さらにWACC=加重平均資本コストとの関係も確認しています。統合レポートでは、ROICを構成するROSと投下資本回転率、ならびにWACCとの間に相関関係のある人的資本指標の特定に挑戦したと説明されています。
この設計は、オムロンが人的資本施策と財務指標・企業価値との関係性を、より具体的な経路として説明するうえで有効なアプローチです。
ROICが高まる背景には、利益率の改善がある場合もあれば、資本効率の改善がある場合もあります。そのため、オムロンのように「人的資本施策がどのような経路で財務指標や企業価値と関係し得るのか」を丁寧に説明したい場合には、ROICを構成要素に分解して見ることで、より解像度の高い示唆を得やすくなります。
たとえば、従業員満足度や多様な働き方に向けた環境づくりは、従業員の創造性や生産性を通じてROSに関係する可能性があります。一方で、女性役員比率や女性管理職比率といったリーダーシップの多様性は、意思決定の質や資本配分のあり方を通じて、投下資本回転率に関係する可能性があります。
オムロンの開示では、こうした関係性が「ROIC・ESG逆ツリー展開」として示されています。具体的には、ROICの下にROSと投下資本回転率を置き、ROSには従業員満足度、女性比率、多様な働き方に向けた環境づくりを、投下資本回転率には従業員満足度、女性役員比率、女性管理職比率を紐づけています。また、WACCには離職率、休業災害度数率、従業員満足度、女性比率が紐づけられています。
出典:オムロン「統合レポート2023」
この図は、人的資本指標を単独のKPIとして並べるのではなく、財務指標との関係性のなかで再配置している点に特徴があります。
どのようなデータ分析が行われたのか
オムロンの統合レポート2023では、分析方法についても具体的に開示されています。
分析方法は、大きく3つのステップで整理されています。
第一に、オムロンを含む電子機器・部品業界139社の財務・非財務指標をもとに、AI・機械学習モデルを活用した分析を行い、人的資本関連データと財務指標との関係性を定量的に確認しています。
第二に、中期経営計画「SF 1st Stage」における人財施策の成果指標にまつわる非公表データについても、同様に関係性を確認しています。
第三に、どの非財務指標が財務指標と相対的に強い関係を持ち得るのか、その方向性や特徴を可視化し、結果をESGアナリストらが解析しています。
ここで注目したいのは、分析が「自社データだけ」に閉じていない点です。
オムロンは、自社固有の相関関係を確認するだけでなく、一部の人的資本指標については、外部から参照可能な補完データも織り込み、投資家が参照し得る情報に近づける工夫を行ったと説明しています。
これは、財務・非財務データ分析を実務で行ううえで重要なポイントです。
人的資本指標は、企業ごとに定義や開示状況が異なります。そのため、自社の内部データだけを見ても、その水準が高いのか低いのか、業界内でどのような位置づけなのかを判断しにくい場合があります。比較対象となる業界全体のデータと組み合わせることで、自社の取り組みがセクターのなかでどのような意味を持つのかを把握しやすくなります。
分析対象は139社、2016年から2022年までのデータ
データ分析に関心を持つ企業担当者にとって、特に参考になるのが、対象データの具体性です。
オムロンの統合レポート2023では、分析対象として、世界産業分類基準であるGICSの「テクノロジー・ハードウェアおよび機器」業種139社、オムロンを含む企業群が設定されています。変数は、財務指標としてROS、投下資本回転率、WACC、非財務指標として人的資本関連の49指標が用いられています。さらに、一部にはオルタナティブ・データも含まれ、時系列は2016年から2022年までとされています。
整理すると、以下のような分析設計です。
- 分析対象:GICS「テクノロジー・ハードウェアおよび機器」業種139社(オムロン含む)
- 財務指標:ROS、投下資本回転率、WACC
- 非財務指標:人的資本関連49指標
- データ期間:2016年〜2022年
- 分析手法:財務・非財務指標をもとにした機械学習モデルの構築、
- 重要性・貢献度の定量化、相関性の可視化
- 補完データ:外部から参照可能な補完データ、オムロンの非公表データ
この具体性は、統合報告書における開示として非常に重要です。
「AIを使って分析しました」「ビッグデータを活用しました」という表現だけでは、読み手は分析のスコープや信頼性を判断できません。何社・何年分のデータを使ったのか、どのような財務指標・非財務指標を見たのかが示されることで、読者は分析の輪郭をつかむことができます。
オムロンの人財施策との接続
オムロンの統合レポート2023では、「ピープル」セクションにおいて「人的創造性を高める8つの施策」が整理されています。
1st Stageでは、人的創造性を高めるために最も有効と考えた8つの人財施策に注力し、それぞれに定めた成果指標の達成を目指していると説明されています。
具体的には、
- 価値創造をリードする専門人財のグローバル採用
- グローバル重要ポジションの現地化推進
- 次世代女性リーダーの育成強化による女性活躍推進
- キャリア・雇用形態・働き方の多様な選択肢の拡充
- 社会的課題解決にむけ成長意欲のある人財への投資
- 一人ひとりの役割責任・スペシャリティを定めるジョブ型制度
- 人の成長と挑戦を後押しする“応援文化”の醸成
- 社会的課題解決の成果を分かち合う取り組み・制度
が掲げられています。
成果指標としては、海外重要ポジション現地化率80%以上、VOICE SEI 70ポイント以上、人財開発投資3年累計60億円、グローバル女性管理職比率18%以上などが示されています。
この点が、今回の分析の実務的な意義です。
財務・非財務データ分析は、単に指標同士の関係性を探すだけではありません。重要なのは、経営として推進している施策やKPIが、本当に価値創造ストーリーの中で意味を持つのかを検証することです。
オムロンの場合、1st Stageで掲げるD&I推進施策や人的創造性向上に向けた取り組みが、ROS、投下資本回転率、WACCといった財務指標とどのように関係し得るのかを確認しています。
つまり、分析の出発点は「何か面白い相関を見つけること」ではありません。
自社が重要だと考えている人的資本施策について、その妥当性を財務指標との関係から検証することにあります。
解析結果から見えた、人的資本指標とROICの関係性
解析結果のハイライトとして、オムロンは、当該セクターにおいて、各キャリアステージ、すなわち役員、管理職、社員におけるダイバーシティの推進と、それを可能にする多様な働き方に向けた労働環境づくり、そこから生じる従業員満足度が、収益性、つまりROS、ひいてはROICと関係し得ると整理しています。
また、投下資本回転率については、ジェンダー関連指標との関係性が確認され、特にリーダーシップの多様性が資本の効率的な運用と関係し得る可能性が示唆されています。
これは、人的資本施策の価値を語るうえで非常に重要な示唆です。
D&Iや働き方改革は、一般的には「働きやすい職場づくり」や「人材確保」の文脈で語られることが多いテーマです。しかし、オムロンの開示では、それらが収益性や資本効率といった財務指標との関係で整理されています。
たとえば、多様な人財が活躍しやすい職場環境が整うことで、従業員満足度や創造性、生産性といった要素との関係性が高まり、その結果として、ROSとの関係性が見られる可能性があります。
また、女性役員比率や女性管理職比率といったリーダーシップの多様性が、意思決定の質や資本配分、事業運営の効率性と関係し得る可能性があります。
もちろん、これは因果関係を断定するものではありません。しかし、人的資本施策が財務指標とどのような経路で接続し得るのかを示すことで、統合報告書における価値創造ストーリーは大きく具体化されます。
オムロン固有のデータから見えた示唆
オムロン固有のデータからは、さらに踏み込んだ示唆が示されています。
統合レポート2023では、オムロン固有のデータから、統合レポート2023では、オムロン固有のデータから、女性管理職比率とSEIスコア、すなわち社員エンゲージメント調査の主要項目をバランスよく改善していくことが、ROICとの関係においてポジティブに示唆されたこと、またグローバルコアポジションの現地化比率についてもROICとの正の相関が見られたことが説明されています。
ここで注目すべきなのは、「女性管理職比率だけ」でも「エンゲージメントだけ」でもなく、両者のバランスよい改善がROICにポジティブと整理されている点です。
これは、人的資本指標を単独で見ることの限界を示しています。
たとえば、女性管理職比率が高まっても、組織全体のエンゲージメントが低下していれば、持続的な価値創造にはつながりにくいかもしれません。逆に、エンゲージメントが高くても、リーダーシップ層の多様性が十分に進んでいなければ、意思決定や事業変革に必要な視点が限定される可能性があります。
財務・非財務データ分析の価値は、こうした「指標の組み合わせ」や「バランス」に着目できる点にあります。
また、グローバルコアポジションの現地化比率とROICとの間に正の相関が見られたという示唆も、オムロンの事業特性と結びつけて理解できます。 オムロンはグローバルで約200の重要ポジションを設置し、CEOの決裁でふさわしい人財を選び、経営陣が一体となって評価・育成を行っています。また、海外の重要ポジションに占める現地化比率の向上にも注力していると説明されています。
グローバル企業にとって、現地のビジネス慣習や市場環境に即した意思決定は、事業運営のスピードや精度に影響します。こうした人財戦略がROICとの関係で可視化されたことは、人的資本施策を経営戦略の中核に位置づけるうえで重要な材料になります。
WACCとの関係も確認した意味
オムロンの分析では、ROICを構成するROSや投下資本回転率だけでなく、WACCとの関係も確認しています。
統合レポートでは、人的資本可視化指針で例示されたROICとの紐づけだけでなく、WACCとの相関関係も求めた理由として、人的資本の活用とエクイティストーリーの関連性を検証するためだったと説明されています。
WACCは、企業価値を考えるうえで重要な指標です。一般的に、ROICがWACCを上回る状態を持続できれば、企業価値創造と関係し得ると考えられます。
ただし、WACCは市場環境や投資家の期待、リスク認識など、多くの要因によって変動します。そのため、人的資本指標との関係性は、ROSや投下資本回転率よりも見えにくい場合があります。
実際に、オムロンの解析結果では、当該セクターにおいて、WACCと人的資本関連指標との関係性は限定的だったとされています。 一方で、透明性のある人権政策と多様な労働力を持つ企業は、投資家からビジネスリスクが低く、コーポレートガバナンスの実践が優れていると認識されることで、信頼と支持を醸成できる可能性は一定程度見られたと説明されています。
この記載は、非常に実務的です。
すべての非財務指標が、すべての財務指標に明確な影響を持つわけではありません。むしろ、分析によって「関係が強く見える領域」と「関係が限定的な領域」を切り分けることが重要です。
統合報告書においても、過度に都合のよいストーリーを描くのではなく、データから読み取れる範囲を踏まえて説明することが、投資家との対話における信頼性を高めます。
得られた成果:人財施策と成果指標の妥当性を確認する
オムロンは、解析結果から、D&I施策とROICとの関係性が示唆され、人的創造性の向上に向けた取り組みと成果指標の妥当性を検証する材料が得られたと整理しています。
本記事の整理としては、社内と業界の両側面のデータを用いることで、オムロンの人財施策と成果指標の妥当性を検証する材料が得られた点に意義があると考えられます。今後、こうした分析をさらに発展させる場合には、生産性や効率性、自動化率など、より経営戦略やオペレーションに紐づくKPIとの関係性も確認していくことが重要になります。
ここで重要なのは、財務・非財務データ分析の実務上の役割です。
分析の目的は、「人的資本施策が必ずROICを何%高める」と断定することではありません。むしろ、自社が重視している人財施策や成果指標が、業界データや自社データの中でどのような意味を持つのかを確認することにあります。
オムロンの場合、D&I、働き方、従業員満足度、女性管理職比率、グローバルコアポジションの現地化比率といった指標が、ROICやROICを構成する財務指標と関係し得ることが示されました。
これにより、人的資本施策は「人事部門の取り組み」にとどまらず、財務指標や企業価値との関係性を検証すべき経営課題として説明しやすくなります。
統合報告書における開示としての意義
オムロンの事例が示しているのは、統合報告書における財務・非財務コネクティビティの開示は、単に分析結果を掲載することではない、ということです。
重要なのは、以下の流れを一貫して示すことです。
まず、自社の長期ビジョンやマテリアリティがある。オムロンの場合、SF2030において「価値創造にチャレンジする多様な人財づくり」が重要課題のひとつとして位置づけられています。
次に、その重要課題に対して、具体的な人財施策と成果指標が設定されている。オムロンでは、人的創造性を高める8つの施策と、それに対応する成果指標が整理されています。
そして、その成果指標が財務指標とどのようにつながり得るのかを、データ分析によって仮説検証している。分析では、139社、2016年から2022年までのデータ、人的資本関連49指標などを用いて、ROS、投下資本回転率、WACCとの関係を可視化しています。
最後に、その結果を、今後のマテリアリティの特定や目標設定、開示の高度化に活かしていく。オムロンは、今回の成果を受けて、翌年度に向けて領域を広げた財務指標との相関関係の仮説検証に取り組み、最終的には次の中期経営計画におけるマテリアリティの特定と目標設定に活かしていくことを検討すると説明しています。
この流れによって、統合報告書における価値創造ストーリーは、単なる方針や施策の説明にとどまらず、データに基づいて関係性を検証し、説明可能性を高めるものになります。
実務担当者にとっての学び
オムロンの事例から学ぶべき点は、特定の人的資本KPIをそのまま他社に当てはめることではありません。重要なのは、自社の事業戦略、財務目標、マテリアリティに照らして、どのKPIがどの財務指標と接続し得るのかを設計することです。
そのうえで、財務・非財務データ分析に関心を持つ企業担当者が得られる学びは、大きく4つあります。
1つ目は、分析テーマを自社のマテリアリティと接続することです。
分析は、単なるデータ探索ではなく、経営として検証したい問いから始める必要があります。オムロンの場合、「D&I推進施策は、企業価値向上に向けたマテリアリティとして妥当なのか」という問いが出発点になっています。
2つ目は、分析目的に応じて、財務指標の粒度を設計することです。
ROICそのものを目的変数として非財務指標との関係を見る方法もあれば、オムロンのようにROS、投下資本回転率、WACCといった要素に分解して見る方法もあります。重要なのは、どちらが常に正しいかではなく、何を明らかにしたいのかに応じて、財務指標の置き方を設計することです。
たとえば、非財務指標がROIC全体とどの程度関係しているのかを把握したい場合には、ROICを直接扱う分析が有効です。一方で、非財務指標が収益性と関係しているのか、資本効率と関係しているのか、あるいは資本コストとの関係で見えるのかを説明したい場合には、ROICを構成要素に分解して分析することで、価値創造ストーリーをより具体化しやすくなります。
3つ目は、自社データと外部データを、分析目的に応じて組み合わせることです。
自社の内部データがある場合には、業界データと組み合わせることで、自社の施策やKPIの意味合いを相対的に捉えやすくなります。一方で、社内データが十分に整備されていない段階でも、公開情報や外部データベースを用いた初期診断から検討を始めることが可能です。
4つ目は、分析結果を開示だけで終わらせず、次の経営サイクルにつなげることです。
オムロンは、今回の分析結果を踏まえ、翌年度以降にEとG領域へ拡張し、次の中期経営計画におけるマテリアリティの特定と目標設定に活かすことを検討しています。これは、財務・非財務データ分析を、単発の開示対応ではなく、経営管理や戦略立案に接続する取り組みだといえます。
財務・非財務データ分析は、人的資本経営の説明可能性を高める
人的資本経営は、理念や方針だけでは前に進みません。
どの人財施策を重視するのか。どのKPIを成果指標として置くのか。そのKPIは、収益性や資本効率、投資家からの評価とどのように関係し得るのか。
こうした問いに向き合うことで、人的資本経営は「人事施策の説明」にとどまらず、財務指標や企業価値との関係性を説明する価値創造ストーリーとして整理しやすくなります。
オムロンの統合レポート2023は、その一つの実践例です。
人的資本指標をROIC逆ツリーの中に位置づけ、業界139社・7年分のデータと自社の非公表データを組み合わせ、人的資本関連49指標と財務指標との関係性を可視化する。
その結果、D&I、多様な働き方、従業員満足度、女性管理職比率、グローバル重要ポジションの現地化比率といった指標について、ROICやROICを構成する財務指標との関係性が示唆されました。
これは、人的資本の取り組みを「よいことだからやる」にとどめず、財務指標や企業価値との関係性を検証しながら、経営テーマとして説明していくための一歩だといえます。
次回の後編では、オムロン統合レポート2024において、この検証が人的資本から環境領域へどのように拡張されたのかを取り上げます。ROIC×環境指標の可視化、そしてインパクトの貨幣価値化への挑戦を通じて、財務・非財務データ分析がどのように進化しているのかを見ていきます。
サステナブル・ラボでは、TERRASTに蓄積された上場企業の財務・非財務ビッグデータを活用し、分析可能な問いの設計、KPIと財務指標の接続整理、分析結果の解釈、統合報告書・IR資料への落とし込みまでを一気通貫で支援しています。
自社データが十分に整備されていない段階でも、公開情報やTERRASTのデータを用いた初期診断から始めることが可能です。また、社内に人的資本データや従業員サーベイデータ等がある場合には、それらの棚卸しを行い、外部データと組み合わせた分析設計をご支援します。
「人的資本KPIを財務指標とどう接続すべきか分からない」「統合報告書の価値創造ストーリーをデータで補強したい」「まずは自社データでどこまで分析できるか確認したい」といった段階でも、統合報告書レビュー、KPI棚卸し、財務指標との接続整理、初期診断からご相談いただけます。
参考資料





