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2016年の女性活躍推進法の施行から8年。変化はあったか?データで読み解く。

国際女性デー2024、女性活躍推進法の施行から8年

本日3月8日の国際女性デーは、女性の経済的・社会的地位向上に向けた連帯と行動を促す日として1977年に国連で議決された記念日である(参照:国際女性の日 | 内閣府男女共同参画局)。

日本では働く女性の活躍を後押しする法律として、2015年に「女性活躍推進法」が国会で成立し、2016年4月に施行された。

同法律の施行後、対象企業(労働者301人以上)は、自社の女性の活躍に関する行動計画の策定・公表および届け出が義務づけられ、取り組みの実施と効果測定が継続的に行われるようになった。

2020年の同法改正では、①女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供、②職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備 の2つの区分から一項目以上を選択し、関連する数値目標を設定することが義務づけられた。

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女性活躍推進法よりサステナブル・ラボ作成

 

また2022年の改正では、101〜300人の企業まで行動計画の策定・届け出義務が拡大されたほか、301人以上の企業には、男女の賃金の差異に関する情報の公表が必須となった。(参照:女性の活躍推進企業データベース|厚生労働省

法律施行・改正が行われたこの8年、企業側は女性が活躍しやすい社内制度や職場環境を整備し、男女間の差異を埋める努力を続けてきた。また企業が公表する女性従業員に関するさまざまなデータも蓄積されてきた。

では、これらのデータを活用し、女性活躍推進法の施行以前・以後で働く女性の機会や雇用環境を見た場合、どのような傾向が見えてくるのだろうか。

当社は女性の活躍に関する分析を以下の条件で行った。

●      対象:東京証券取引所に上場する全ての企業(2024年1月末時点)
●      分類:GICSの11セクター別
●      期間:2014-2023年の開示データ

女性活躍推進法施行前後の変化
今回分析した各データ(2014FY〜2023FY)を見ると、全体的に女性活躍推進法の施行から数年経過した2018〜2020年頃から多くのセクターにおいて変化が出はじめている。特に女性の離職率、女性管理職比率、男女の賃金格差のデータで顕著な変化が見られる。以下で各データの推移をグラフで示していく。

女性従業員比率の業種別平均値の推移(2014-2023)

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サステナブル・ラボ作成

 

女性従業員比率の業種別平均を見ると、金融、一般消費財・サービス、情報分析、素材のセクターでは減少傾向、その他のセクターは横ばいまたはやや増加傾向が見られた。

女性従業員離職率の業種別平均値の推移(2014-2023)

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サステナブル・ラボ作成

 

女性従業員の離職率の業種別平均値は、生活必需品、素材のセクターでやや増加しているが、その他のセクターは減少傾向であった。とくに金融セクターの離職率の平均値は2019年まで50%超だったのが、2023年には29.9%まで減少し、20%程度改善している。

女性管理職比率/女性従業員比率(=女性従業員における管理職比率)の業種平均値の推移(2014-2023)

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サステナブル・ラボ作成

 

女性管理職比率/女性従業員の業種別平均値は、資本財・サービス、素材、コミュニケーション・サービスで増加、金融でやや増加が見られる。一方その他のセクターは2020年頃まで横ばいだったのがその後減少している。

取締役会における女性の比率(期末時点)の業種別平均値(2014-2023)

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サステナブル・ラボ作成

 

取締役会における女性の比率(期末時点)の業種別平均値は、すべてのセクターで上昇していた。政府が東証プライム市場上場企業に対して、2025年をめどに少なくとも女性役員を最低1人登用するように促し、2030年までに30%を目指す方針を調整していることなどから、今後さらに女性役員の登用が進むと思われる。(参考:男女共同参画会議 令和5年6月5日「女性版骨太の方針2023(原案)概要

男女の賃金格差(企業全体)の業種平均値の状況(2014-2023)

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サステナブル・ラボ作成

 

男女の賃金格差(企業全体)の業種平均値は、多くのセクターで縮小する一方、素材セクターにおいては2018年まで40%台後半だったのが2023年には80%近くまで差が広がっている。不動産は数%ほど賃金格差が広がっていることが分かった。また結果が示す通りすべての業種で引き続き女性の賃金は男性を下回っている。

まとめ

日本のジェンダー・ギャップ指数(世界経済フォーラム、2023年)は、146か国中125位で、政治参画や経済参画の面で男女間のギャップが著しい。(参照:GGI ジェンダー・ギャップ指数|男女共同参画局

女性活躍推進法の施行やコーポレートガバナンスコードの改正によって、企業の従業員に関する情報公開が進み、定量的なデータにより経年比較や業界比較ができるようになったことは、企業の非財務価値を推し測る上でとても役立っている。一方で、今回の結果で示されたとおり、企業の女性活躍推進分野は多くの指標において改善の余地があることがわかった。

データ(数値)には出てこないが、すばらしい活躍をする女性が増えていることも事実である。男女ともに働きやすく生きやすい社会を実現するために、現在位置を把握する羅針盤として今回の調査データが役立てば幸いである。

データ解析:Franz Hong(データサイエンティスト)
執筆:佐藤みずき(PR)

Case Study

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