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【インパクト評価】製造業におけるDX化推進

サマリー

  • スマートファクトリーの導入が進んでおり、20年度には約4,000億円の市場規模となっており、2025年度には約1兆円に拡大する見込み。大手製造企業を中心に人手不足が続く中、工場のスマート化を加速。
  • 国内大手はロボティクスに加え、ITや通信サービス業界が関連技術やシステムを積極的に展開。
  • 中小企業もスマート工場の恩恵を受ける見込み。ただ、導入コストが高く、スマートファクトリー技術には高度な技術力と知識が必要。

目次

  1. 製造業におけるDX化とは、国内の取り組み

  2. スマートファクトリー関連技術を持つリーディングカンパニー

  3. 中小企業がスマートファクトリー導入するメリット

  4. 中小企業向けの補助金

 

1)製造業におけるDX化推進とは、国内の取り組み

スマートファクトリーとは、工場の生産や運営を改善するために、AIやIoT、ロボティクスなどの先進技術を使う製造施設のこと。スマートファクトリーでは、工場内のすべてがつながって自動化されているので、効率を上げて無駄を減らし、製品の品質を高めることができる。製造業では、IoTやAIなどの先端技術を活用したスマートファクトリーの導入が進んでおり、20年度には約4,000億円の市場規模となっている。2025年度には約1兆円に拡大する見込みである。

スマートファクトリーには、企業にとってさまざまなメリットがある。例えば、データ分析やAIで生産を最適化し、故障や停止を予防することで、生産量を増やしてコストを削減できる。ロボットやAIで人間の作業を代行し、人件費を減らして精度や正確性を向上させることで、収益性を高めることができる。生産ラインをすばやく変更して新しい製品に対応できるので、消費者のニーズや市場の動向に迅速に対応できる。

しかし、スマートファクトリーには、問題点や課題もある。例えば、自動化が進むと、低スキル職がなくなるため、人が介在する業務はより高度化していく。そのため、この流れについていけない労働者が失業したり、経済的に取り残される恐れがある。また、初期投資コストが高く、中小企業がこの技術を導入するのが難しい場合がある。さらに、接続された機器やシステムがサイバー攻撃の標的になり、データが漏れたり、工場が停止したり、お金が失われたりする危険性もある。

以上のように、スマートファクトリーはメリットとデメリットがあり、企業がこの技術を採用する際には、コストとメリットのバランスを考え、リスクを減らすための対策を立てる必要がある。

また、前回のレポートでも記載した通り、サプライチェーンのデジタル化も重要な課題であり、20年度には約1,500億円の市場規模となっている。2025年度には約3,000億円に拡大する見込みである。さらに、スマートファクトリーの普及には人材育成や組織変革などのソフト面のデジタル化も必要とされている。その市場も2020年度には約1,000億円の市場規模となっており、2025年度には約2,000億円に拡大する見込みだ。

スマートファクトリーの代表的な技術事例

IoT:工場内の機器や製品にセンサーや通信機能を搭載し、リアルタイムにデータを収集・分析することで、生産状況や品質管理、故障予測などを行う。例えば、トヨタ自動車は、IoTを活用して工場内のエネルギー消費量を最適化し、CO2排出量を削減している。

AI:人工知能や機械学習を用いて、工場内のデータを分析し、生産計画や在庫管理、品質改善などの最適な判断や行動を支援する。例えば、日立製作所は、AIを活用して製造プロセスの異常検知や品質予測を行い、不良品率を低減している。

ロボティクス:ロボットや自動化装置を導入し、人間の作業を代行することで、労働力不足や労働環境の改善、生産性や精度の向上を図る。例えば、ファナックは、ロボットや自動化装置を自社工場に導入し、人間の介入がほとんどないスマートファクトリーを実現している。

クラウド:クラウドコンピューティングやエッジコンピューティングを利用し、工場内外のデータやシステムを統合・管理することで、情報共有や連携、迅速な対応が可能になる。例えば、日本電産は、クラウドコンピューティングを活用してグローバルに展開する工場間のデータ連携や見える化を実現している。

AR/VR:拡張現実(AR)や仮想現実(VR)などの技術を活用し、工場内の作業者にリアルタイムで情報提供したり、遠隔地から指導したりすることで、作業効率や教育効果の向上を図る。例えば、三菱重工業は、AR技術を活用して航空機エンジンの組み立て作業における作業手順や注意点などを表示し、作業時間の短縮や品質向上に貢献している。

 

2)スマートファクトリー関連技術を持つリーディングカンパニー

日本にはスマートファクトリー関連技術を持つリーディングカンパニーが多く存在する。以下に、スマートファクトリー関連技術により収益拡大の恩恵を受ける日本の企業5社を紹介する。

ソフトバンクグループ(9984):データ収集・分析、遠隔監視・制御、予知保全、エネルギー管理など、スマートファクトリー向けのIoTソリューションを提供する企業。また、産業用ユースケース向けのローカル5GやプライベートLTEサービスも提供している。顧客基盤の拡大とサービス提供の強化により、IoT事業による収益の増加を見込んでいる。同社は、IoTの接続とデータ伝送をサポートする強力なネットワークインフラと周波数ポートフォリオを有している。また、スマートファクトリー、スマートシティ、スマートアグリ、スマートホーム、スマートモビリティなど、さまざまな産業やユースケースに対応する幅広いIoTソリューションとプラットフォームも併せ持つ。さらに、ARMなどIoTのリーディングカンパニーとのグローバルなパートナーシップと投資を活用し、IoTの能力と提供を強化している。しかし、KDDI、NTT、楽天、Amazonなど、他のIoTサービスプロバイダーとの激しい競争に直面している。

日立製作所(6501):異常検知、品質予測、需要予測、生産最適化など、スマートファクトリー向けのAI技術を開発する企業である。また、製造業、自動車、エネルギーなど様々な業界向けにAIプラットフォームやソリューションを提供している。製造業、自動車、エネルギー、インフラなど、さまざまな産業・分野でのナレッジや専門知識を有しており、IoT、AI、クラウド、ロボティクスなど、スマートファクトリーソリューションとプラットフォームの包括的なポートフォリオを持っている。自社のスマート工場を、スマートファクトリー技術やイノベーションのショーケースやテストベッドとして活用している。同社は、製造業が活況を呈しデジタル化が進むアジアにおける、スマートファクトリーのサービスやソリューションに対する需要の高まりを上手く活用することができるほか、外資大手企業とのパートナーシップや協業を活用し、スマートファクトリーの能力と提供を強化することができる。競合相手としては、シーメンス、GEなど他のスマートファクトリーサービスプロバイダーが挙げられ、激しい競争に直面している。

ファナック(6954):スマートファクトリー向けの産業用ロボットやオートメーションシステムを製造・販売している。同社は、スマート工場向けの産業用ロボットとオートメーションシステムのグローバルリーダーであり、イノベーターである。また、自社製品・技術を用いたスマートファクトリーを運営している。同社は、スマートファクトリー技術に関する強力な研究開発能力と豊富な特許ポートフォリオ、様々な産業、地域に対応した多様な顧客基盤を有している。特に産業の高度化とイノベーションを推進している中国では需要が高まっており、ビジネスチャンスが広がっている。また、ヘルスケア、農業、教育などの新興分野や領域における新たなスマートファクトリーの機会創出も可能だろう。競合となるのは、シーメンス、ABB、安川電機など、他のスマートファクトリーサービスプロバイダー。また、同社は製造業への依存度が高く、周期的・季節的な変動の影響を受ける可能性もある。

富士通(6702):ファナックと同様である。スマートファクトリー向けの産業用ロボットやオートメーションシステムを製造・販売し、スマートファクトリー技術に関する強力な研究開発能力と豊富な特許ポートフォリオ、様々な産業や地域にわたる多様な顧客基盤を持っている。中国のスマートファクトリーのサービスやソリューションに対する需要の高まりを利用することができ、新興分野や領域における新たなスマートファクトリーの機会を探ることもできるだろう。しかし、こちらもファナック同様、シーメンス、ABB、安川電機など、他のスマートファクトリーサービスプロバイダーとの激しい競争に直面しており、製造業への依存度が高く、周期的・季節的な変動の影響を受ける可能性もある。

サン電子(9928):サン電子は、ゲーム機やカジノ機器などの開発・製造・販売を行っており、高い技術力と創造力を持っている。また、産業用機械メーカー向けのアフターサービス支援プラットフォームの開発に着手。産業用ロボット大手の安川電機と協業し、同社が開発したAR技術を用いた業務効率化システム「AceReal」の機能をベースに提供。現在はスマートファクトリー向けの製品・サービスはまだ限定的だが、スマートファクトリーの需要が高まる中で、AR技術のメリットや価値をアピールし、新たな提携先や顧客、市場の開拓に注目が集まっている。ただ、ゲーム機やカジノ機器などの事業に大きく依存しており、市場の変化や競争に対応するのが難しい可能性もある。

 

3)中小企業がスマートファクトリーを導入するメリット

中小企業は、スマートファクトリーの力を活用し、新しい市場にアクセスし、生産性を向上させることができる。ただ、中小企業は、スマートファクトリー技術を採用するための準備と能力、および潜在的なメリットとリスクを慎重に評価する必要がある。

スマートファクトリーは、中小企業が製品やサービスをカスタマイズし、他のプレーヤーと協力・統合して新たなビジネス機会を創出することを可能にし、生産プロセスの自動化と最適化、柔軟性と俊敏性の強化によって、中小企業の業務効率と品質を向上させることができる。さらに、スマートファクトリーは生産プロセスから得られるデータと洞察を活用し、中小企業のイノベーション能力と競争力を向上させることも可能である。

しかし、中小企業がスマートファクトリー技術を採用するにあたっては、導入コストが高く、スマートファクトリー技術には高度な技術力と知識が必要な場合があるため、中小企業の予算や人材の不足が障壁となる可能性がある。また、スマートファクトリー技術は、サイバーセキュリティリスクやデータ侵害の可能性があり、プライバシーや法的・規制的リスクに直面することもある。

 

4)中小企業向けの補助金

スマートファクトリー化に利用できる公的補助金制度は、以下のようなものがある。

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金とは、中小企業が新たな価値を創出するために、革新的な取組を行う場合に支援する補助金である。具体的には、以下のような取組が対象となる。

  • デジタル化やIoTの活用による生産性向上
  • 新規事業や新商品の開発・展開
  • 海外市場への進出や国際競争力の強化

補助金の補助率は3分の2で、上限は5億円。申請者は、中小企業であること、事業計画書を作成すること、生産性向上指標を設定することなどが条件となる。

具体例:

株式会社アイエスティ:自動車部品の製造において、AIやIoTを活用した品質管理システムや生産管理システムを導入し、不良率や在庫率の低減、納期の短縮などを実現。

株式会社ユニバーサルベアリング:軸受の製造において、AIやIoTを活用した設備の予知保全や生産管理システムを導入し、設備稼働率や生産効率の向上、コスト削減などが可能に。

株式会社ハイテック:電子部品の製造において、AIやIoTを活用した品質管理システムや生産管理システムを導入し、不良率やリードタイムの低減、顧客満足度の向上などが実現。

出所:https://portal.monodukuri-hojo.jp/jireikensaku.html

 

ものづくり・商業・サービス高度連携促進事業補助金

ものづくり業と商業・サービス業が連携して、新たな価値を創出するために支援する補助金。具体的には、以下のような取組が対象となる。

  • ものづくり業と商業・サービス業が共同で新商品や新サービスを開発・販売する取組
  • ものづくり業と商業・サービス業が共同でデジタル技術やIoT技術を活用して生産性向上や顧客満足度向上を図る取組
  • ものづくり業と商業・サービス業が共同で海外市場への進出や国際競争力の強化を図る取組

補助金の補助率は3分の2で、上限額は単年度あたり4,500万円以下、3年間の合計で9,750万円以下。申請者は、ものづくり業と商業・サービス業の事業者であること、事業計画書を作成すること、連携先事業者と契約することなどが条件となる。

具体例:

株式会社エヌエスティー:食品の製造において、商業・サービス業の物流企業と連携して、IoTやRFIDを活用したトレーサビリティシステムや在庫管理システムを導入し、品質や安全性の向上、ロス削減などを実現した。

株式会社エムエスエイ:化粧品の製造において、商業・サービス業の美容院と連携して、オンライン販売やデリバリーなどの新規顧客獲得ツールを導入し、売上や利益の向上、新たなビジネスモデルの構築などを実現した。

出所:https://www.meti.go.jp/information/publicoffer/kobo/2021/downloadfiles/k210210001_01.pdf

 

インゴ ティートベール(Director of ESG Research and Solutions)
京都生まれ、ドイツ育ち。大学院卒業後、SMBC日興証券に入社し、M&AやIPO関連業務に従事。その後、モルガン・スタンレーに移り株式調査部で証券アナリストを務める。アディダスで経営企画・財務分析のマネージャーを務めた後、当社に参画。当社のESGソリューションを牽引。

 

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