2026年7月2日(金)、弊社代表取締役CEOの平瀬錬司は、日経印刷主催ESGセミナーで、IR・サステナ開示を「AIにも人にも使われるデータ資産」として設計し直す必要性を説明し、講演では、AIが企業情報を取得・要約・比較する時代に、未読・誤読・文脈欠落を防ぐ「AI可読性」が企業価値評価の入口になると指摘しました。
実務対応として、統合報告書、サステナサイト、IRページ、FAQ、CSVを一つの正本から展開し、診断・改善・開示アーキテクチャ再設計へ進むロードマップを示し、今後の展望としました。
■ 開催概要
日程:2026年7月2日(木)
時間:14:00〜16:00
会場:オンライン
主催:日経印刷株式会社
講演:「IR・サステナ開示は“読ませる資料”から“使われるデータ”へ」
講演の概略:AI時代、開示は「資料」から「データ資産」へ変わる
講演では、企業のサステナビリティ情報が、投資家や金融機関、評価機関、取引先、そしてAIによって読み取られ、比較・分析される「データ資産」になりつつあると説明しました。
従来のIR・サステナビリティ開示は、人が目で読み、内容を理解し、必要な情報を探すことを前提に高度化してきました。しかし、生成AIや検索AI、投資家向け分析AIが企業情報にアクセスするようになると、最初に問われるのは「資料が存在するか」ではなく、「AIが正しく取得し、要約し、引用できるか」という点になります。
この変化により、統合報告書やサステナビリティサイトは、単に読みやすい資料であるだけでは十分ではなくなりました。画像化されたテキストや複雑な表、注記や定義が分散した構成、媒体ごとの表現の違いは、AIによる未読・誤読・文脈の欠落を招き、企業が本来伝えたい価値が適切に評価されないリスクにつながります。
AI可読性とは、企業の文脈・構造・数値関係を誤読させない情報設計
講演の中心となった「AI可読性」は、単にOCRで文字を読み取れるか、テキストを抽出できるかという話ではありません。AIが読んでも、企業の文脈や見出しの階層、表の意味、KPIの定義、単位・時点・注記の関係を正しく理解できるようにする情報設計を指します。
サステナブル・ラボでは、AI可読性を「取得性」「構造性」「意味性」の3つの観点で整理しています。具体的には、テキスト抽出性、表の機械可読性、メタデータ、見出し階層、ナビゲーション、アクセシビリティ、段落の粒度、要約・対話性という8つの要素から点検する考え方を紹介しました。
任意開示の乱立は、「正本(Canonical Source)」で一元管理する
統合報告書、サステナビリティサイト、ESGデータブック、有価証券報告書、IRページ、ニュースリリース、評価機関への回答、取引先アンケートなど、任意開示の媒体が個別最適で増えていくと、同じ企業の情報であっても、掲載場所や優先順位、更新日、定義が分かりにくくなります。その結果、人は必要な情報を探す負担が増え、AIもどの情報を根拠とすべきか判断しづらくなります。
講演では、任意開示を単なる「制作物の積み重ね」として捉えるのではなく、「一つの情報体系」として設計する必要があると強調しました。
その中核となるのが、「正本(Canonical Source)」です。用語や数値、KPIの定義、更新ルールを一元管理し、そこからPDFやWeb(HTML)、FAQ、CSV、メタデータへ展開することで、媒体ごとの不整合や更新負荷を抑えながら、AIにも人にも一貫した企業価値のストーリーを届けることができます。
WEBは入口、PDFは証跡。媒体を競合させず、役割分担する
講演では、PDFを否定するのではなく、Web・PDF・FAQ・CSVをそれぞれの用途に応じて設計することが重要だと説明されました。
PDFは、体系的なストーリーの提示や保存性、配布、証跡の管理に優れています。一方、Web(HTML)は更新性や検索性、AIクローラビリティに優れており、AIが最初に参照する入口になりやすい媒体です。また、CSVは定量データの比較に適しており、FAQは想定される質問に対して直接的に回答できる点が強みです。
そのため、上場企業が目指すべきなのは、「人間向けの美しいPDF」と「AI向けの機械的なデータ」のどちらかを選ぶことではありません。同じ正本(Canonical Source)から、人には読みやすいデザインを、AIには抽出・要約・比較しやすい構造を提供する「二重設計」が重要であると説明されました。
実装は診断から始め、短期間で改善の優先順位を明確にする
実務における第一歩は、既存の統合報告書やサステナビリティサイト、IRページを対象に、AIがどこで情報を読み取れないのか、どこで誤読する可能性があるのかを可視化することです。
講演では、「AI可読性スコアカード」の作成をはじめ、未読・誤読ポイントの洗い出し、改善優先度の整理、修正指示書の作成を成果物とする「まず診断」という進め方が紹介されました。
その後は、現状診断の結果を踏まえ、PDFやFAQなどのクイックウィン施策に取り組み、さらに正本(Canonical Source)の設計や全体アーキテクチャの検討へと進みます。大規模な刷新を待つのではなく、まずは企業価値評価の入口で情報が適切に伝わらないリスクを低減し、そのうえでIR・サステナビリティ・広報・IT・法務を横断する情報ガバナンスとして運用していくことが、現実的なロードマップであると説明されました。
まとめ
企業開示は、単に読みやすい資料であるだけでなく、AIにも人にも活用される「データ資源」へと進化する必要があります。
AIが企業情報を先に読む時代には、「どのように読まれるか」そのものが企業価値評価の入口となります。そのため、任意開示を正本(Canonical Source)を起点として全体最適化し、Webは情報への入口、PDFは証跡、FAQやCSVは直接的な回答や比較のためのデータとして役割を整理・設計することが、これからの上場企業に求められる開示競争力になると締めくくられました。



AIフレンドリーなサステナビリティ開示へ
情報の読み手が「人」から「AI+人」へと広がる中、AIに“正しく解釈される”ことが、これからの開示における重要な前提となりつつあります。サステナブル・ラボは、守りと攻めの両面から、AIフレンドリーなサステナビリティ開示の実現を支援します。





