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【インパクト評価】スマートシティの開発

目次

1)スマートシティとは

2)国内のスマートシティに関する取り組み

3)スマートシティ関連技術を持つリーディングカンパニーと、中堅・中小企業への波及

4)スマートシティ関連の補助金

1)スマートシティとは

スマートシティとは、テクノロジーとデータ主導のソリューションを活用し、持続可能性、効率性、住民の生活の質を向上させた都市のこと。スマートシティは、モノのインターネット(IoT)、ビッグデータ分析、人工知能(AI)、クラウドコンピューティングなどの先進技術を活用し、資源の管理、廃棄物や排出物の削減、移動の強化、サービスの最適化を行っている。スマートシティは、テクノロジーに特化するだけでなく、社会と環境の持続可能性を優先し、不平等、気候変動、資源枯渇などの問題に取り組む必要がある。そのためには、政府、企業、市民社会が連携して、すべてのステークホルダーに利益をもたらす政策、インフラ、サービスを開発する、全体的なアプローチが必要とされている。

スマートシティの取り組みは、技術力だけでなく、エネルギー消費、廃棄物管理、大気や水質、手頃な価格の住宅、交通、医療へのアクセス、利益の公平な分配といった要素を含む社会・環境への影響も含めて評価することが重要。こうした側面に注目することで、市民にとってより持続可能で強靭な未来を創造することができる。今後、特にスマートシティプラットフォームやその関連ソリューションを提供する企業において収益拡大のチャンスがあると見られる。

スマートシティプラットフォームは、AIやIoTなどのテクノロジーやデータを活用したスマートシティの取り組みを加速することを目的としたソリューションだ。交通管理、健康、公共安全、環境、エネルギー、ガバナンス、建築環境などのアプリケーションを含む、都市に存在するあらゆるデータへのシームレスなアクセスを可能にするIoT対応ソリューションである。

図表1:国内スマートシティ関連プロジェクトの市場規模予想(単位:億円)

出所:野村総研の予測をベースにサステナブル・ラボが作成

 

 2)国内のスマートシティに関する取り組み

国土交通省が実施するスマートシティ形成支援事業が中心となっており、多くの先行モデルプロジェクトが存在。これらのプロジェクトは、エネルギー、交通、健康、防災などの分野で、IoT、ビッグデータ、AIなどの技術を活用して、より効率的で持続可能な都市を実現することを目的としている。日本には、スマートシティへの取り組みを積極的に進めている都市がいくつかある。

  • 東京 IoT、ビッグデータ、AIなどの先進技術を活用し、住民の生活の質を向上させる「スマート東京」の実現を目指している。具体的な行動としては、自動運転やMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)などのスマート交通システムの開発、エネルギー消費と温室効果ガス排出を削減するためのスマートエネルギーマネジメントソリューションの導入などが挙げられる。
  • 横浜 スマートシティ構想「横浜スマートシティプロジェクト」は、エネルギー、モビリティ、まちづくり等に重点を置いている。具体的には、再生可能エネルギーの大規模導入やエネルギー利用を管理するスマートグリッドの構築、次世代交通システムの導入、市民の参加・参画を促すコミュニティプラットフォームの開発などを行っている。
  • 大阪 スマートシティ「e-OSAKA」は、交通、防災、楽しいまちづくりなどの分野に焦点を当て、住民の生活の質向上と持続可能で住みやすい都市作りを目的としている。また並行して「おおさかスマートエネルギープラン」を推進し、エネルギー消費量を削減するスマートエネルギーマネジメントシステムの導入や、再生可能エネルギーの地産地消に取り組む。
  • 福岡 スマートシティ構想「Fukuoka Smart East」は、モビリティ分野を中心に健康、防災、エネルギー効率の向上などに取り組む。具体的なアクションとしては、さまざまな交通手段を統合したスマート交通システムの開発や、公共施設やビルにおけるスマートエネルギーマネジメントシステムの導入が挙げられる。
  • 札幌 スマートシティ構想「Sapporo Smart City」は、ICT(オープンデータ・ビッグデータ)の利活用による 生活・経済・教育・行政の生産性・質の向上を目指している。また、公共施設におけるスマートエネルギーマネジメントシステムやさまざまな交通手段を統合したスマート交通システムの導入、医療サービスへのアクセスを改善するために遠隔医療やその他のデジタルヘルスケアソリューションの利用を検討している。
  • さいたま市 「スマートシティさいたまモデル」は、モビリティ、健康、エネルギー、コミュニティ、データの5つの分野を中心に、市民生活の質の向上を目指す。エネルギー分野では、太陽光発電や地熱など再生可能エネルギーの利用、スマートメーターの普及、省エネルギー型住宅の建設など、災害にも負けないまちづくりが行われている。
  • つくば市 つくば市の特徴である科学技術を使い、エネルギー、水、廃棄物、交通などの分野で、より持続可能な都市を実現することを目指している。具体的な取り組みには、インターネット投票や移動支援モビリティの開発、建物の省エネルギ ー性能向上や再生可能エネルギーの導入、低炭素住宅の建築を支援などが含まれる。
  • 静岡県裾野市 トヨタ自動車が「Woven Cityプロジェクト」に取り組んでいる。Woven Cityは、トヨタが開発する次世代のモビリティ技術や、人工知能、ロボット技術、持続可能なエネルギーの実証実験場としても活用されており、世界中の都市開発に大きな影響を与えることが期待されている。例えば、同社が開発した自動運転車「e-Palette」や、家庭用AIロボットなどが活用され、暮らしをサポートする。また、Woven Cityでは、持続可能なエネルギーとして、太陽光発電、水素燃料電池などが採用されている。

図表2:国内の主なスマートシティ関連プロジェクト

出所:国道交通省

 

 

3)スマートシティ関連技術を持つリーディングカンパニーと、中堅・中小企業への波及

日本企業にはスマートシティ関連の技術を扱うリーディングカンパニーが多く存在する。例えば、社会インフラ・交通システム・エネルギーマネージメント関連(日立製作所、三菱電機、東芝など)、IoT・AIソリューション関連(NTTデータ、NEC、パナソニックなど)建設会社(三井住友建設、大成建設、清水建設など)だ。以下に業界の代表的な企業の取り組みをまとめた。先進の環境技術が海外でも収益拡大の要因になるかが注目だ。

【日立製作所(1918)】交通インフラ、およびIoT関連の幅広いソリューションにて国内外で受注を拡大。 

交通、エネルギー管理、データ分析などの分野で強い存在感を示す多角的企業である日立製作所は、日本および世界におけるスマートシティの成長からの恩恵を受ける好位置にある。鉄道システム、信号システム、その他の交通関連技術を提供するリーディングカンパニーであり、交通分野でも強い存在感を示している。スマートシティが成長・発展するにつれ、効率的で信頼性の高い交通システムの需要が高まると考えられる。実際、2022年11月にイタリアで鉄道デジタル信号システム1260億円受注を獲得。

同社は、エネルギー管理分野でも大きな存在感を示しており、エネルギー貯蔵、スマートグリッド、再生可能エネルギーに関連するさまざまな製品・サービスを提供している。スマートシティでは、効率的で持続可能なエネルギー管理システムが必要とされている。データ分析および人工知能(AI)にも多額の投資を行っており、これらの技術を活用したさまざまな製品・サービスを開発している。スマートシティの文脈では、データ解析とAIは、交通システム、エネルギー管理、およびその他の重要な分野の改善に利用される可能性がある。

図表3:日立製作所が展開するスマートシティ実現に向けた自治体・民間企業データを活用したサービス

出所:日立製作所

 

【三菱電機(6503)】ビルIoTプラットフォームを活用したビル運用支援サービスに期待。スマートシティーをテーマとした展示場も都内の本社に開設。

同社は、建築・設備関連事業も展開している。建物の省エネ化や快適性の向上を目指し、空調・照明・電力管理システムなどの製品を提供。また、建物全体を一元管理するBEMS(Building Energy Management System)も強み。都市インフラ関連事業は水道や下水道、ゴミ処理などのインフラシステムの効率化や省エネ化を目指し、自動化技術やセンサー技術を活用した製品を提供している。また、防災対策にも力を入れており、災害時の情報収集・配信システムの開発なども行う。

【NTTデータ(9613)】スマートシティーシステム構想「ソサエティOS」を展開。NTTグループの技術を活用しながら都市・地域のニーズへの対応を加速。

スマートシティは、さまざまなソースからデータを収集し分析するために、モノのインターネット(IoT)と人工知能(AI)技術に依存する。NTTデータはこの2つの分野で専門知識を有しており、都市がスマートシティソリューションの導入を検討する中で、高い需要が見込まれる。

【NEC(6701)】自治体DX向け開発環境、見守りカメラ、災害・地理データとの連携が強み。子会社のNECネッツエスアイ(1973)は25年度にまちづくり事業で500億円の売上高目標を設定。

NECは、スマートシティプラットフォーム、データ分析、公共安全、パートナーシップやコラボレーションなどの専門知識を有しており、日本や世界におけるスマートシティのトレンドの高まりから恩恵を受ける。同社は各都市のニーズに合わせてカスタマイズ可能な、さまざまなスマートシティプラットフォームを開発し、交通、エネルギー管理、公共安全など、さまざまなソリューションを展開している。また、高度なデータ分析能力も開発しており、これを活用することで、都市のリソースをよりよく理解し、管理することができる。例えば、交通の流れを最適化したり、エネルギー使用量を管理したり、犯罪を予測・防止したりするために、データ分析を活用することができる。公共安全に関しては、生体認証技術や顔認証システムなど、公共安全ソリューションを展開。スマートシティの文脈では、これらの技術は、例えば、混雑した場所で潜在的な脅威を特定したり、不審な動きがないか交通を監視するなど、公共の安全とセキュリティを向上させるために使用することができる。都市がより混雑し複雑化するにつれ、この種のソリューションに対する需要はますます高まっていくと思われる。

【三井住友建設(1821)】エネルギー関連施設やインフラ管理運営事業に注力。新しい建設技術を開発中へ積極的な姿勢。

同社は、日本におけるZEB・ZEHの建設、兵庫県に1.6MWの水上太陽光発電建設など、環境に配慮した建設プロジェクトに既に取り組んでいる。また、建設にとどまらず、新しいソリューション展開を図り、スマートシティの技術が発展するにつれて、革新的な建設ソリューションへの需要が高まる。3Dプリンターやモジュラーコンストラクションなど、新しい建設技術も積極的に開発。

【トヨタ自動車(7203)】スマートモビリティ市場におけるリーダーシップを確立

スマートシティに向けた主な取り組みとして、自律走行、電動化、コネクテッドカーなどの先進モビリティ技術の開発・展開が挙げられる。また、車車間通信やリアルタイム交通管理など、スマートインフラやサービスの開発にも投資。同社は、新興のスマートモビリティ市場におけるリーダーとしての地位を確立し、新しい技術やデータを活用して業務を改善することで、同社の長期的な成長と収益性に貢献することが期待される。また、スマートシティへの取り組みにより、輸送や物流の効率化やコスト削減が期待され、トヨタのサプライチェーンや物流業務にメリットをもたらす可能性がある。さらに、スマートシティ構想から得られるデータを、商品開発やマーケティング戦略の改善に活用することも可能である。

 

中堅企業へのスマートシティ化の波及

また、直近では中堅企業もスマートシティ関連事業に積極的に取り組んでいる。 ネットワークソリューションとサイバーセキュリティの専門知識、デジタルトランスフォーメーション関連サービスを展開するネットワンシステムズ(7518)、日鉄ソリューションズ(2327)などの中堅SIerもその一つ。スマートシティ開発にも応用可能なデジタルトランスフォーメーションを支援し、よりデータドリブンな都市や自治体の取り組みを支援できる可能性がある

大崎電気工業(6644)はスマートインフラ関連がけん引する可能性があり、配電やスマートメーターなど、さまざまなインフラソリューションを提供している。スマートシティでは高度なインフラが必要とされ、さらに同社の再生可能エネルギーソリューションに対する需要が増加する可能性もある。

 

中小企業へZEB化・ZEH化の恩恵が拡大する見込み。今後、ZEH住宅の義務化の可能性も。

中小企業もスマートシティの成長による恩恵を得る可能性が高い。全体として、スマートシティのトレンドの高まりは、中小企業にとって、新しい市場への参入、イノベーション、パートナーシップの形成、地域経済の発展への貢献など、さまざまな機会をもたらす。イノベーション、研究開発、パートナーシップに重点を置く中小企業は、スマートシティ市場で競争優位に立ち、経済全体の成長に貢献することができるだろう。特に都市のスマート化に伴い、製品やサービスの新たな市場が出現し、中小企業がこれらの市場に参入して成長する機会が生まれる。例えば、再生可能エネルギー、ICT、スマートインフラを専門とする中小企業は、自社の製品やサービスに対する需要が増加する可能性がある。

また、スマートシティには革新的なソリューションが必要であり、中小企業は大企業よりも機敏で、変化する市場ニーズに適応できることが多い。イノベーションとR&Dに注力する中小企業は、スマートシティ市場において競争優位に立てる可能性がある。さらに、中小企業はインフラプロバイダーやテクノロジー企業など、スマートシティのエコシステムにおける大企業とパートナーシップを結ぶことで利益を得られる可能性がある。このようなパートナーシップは、中小企業が新しい市場にアクセスし、専門知識を身につけ、新しい製品やサービスを開発するのに役立つ可能性がある。

 

4)スマートシティ関連の補助金

スマートシティ関連の製品・サービスを提供する企業には様々な補助金が環境省、国土交通省や経済産業省に準備されている。これらの補助金は、実証事業に必要な費用の一部を補填することで、中小企業がスマートシティ関連事業に参画しやすくすることを目的としている。具体的には、スマートシティに関する新しい製品・サービスの開発や導入、技術開発、海外展開などに利用することができる。

中小企業がスマートシティ関連技術やサービスを導入する場合に、その導入に必要なコストの一部を補助することができる。具体的には、スマートグリッド、省エネルギー、再生可能エネルギー、ICTを活用した交通システムなどが対象。また、中小企業がスマートシティ関連事業を立ち上げる場合に、その事業の計画策定や調査研究、評価等の支援を受けることもできる。具体的には、スマートシティ関連の新規事業や製品開発、既存事業のスマート化、事業モデルの構築などが対象となる。

インゴ ティートベール(Director of ESG Research and Solutions)
京都生まれ、ドイツ育ち。大学院卒業後、SMBC日興証券に入社し、M&AやIPO関連業務に従事。その後、モルガン・スタンレーに移り株式調査部で証券アナリストを務める。アディダスで経営企画・財務分析のマネージャーを務めた後、当社に参画。当社のESGソリューションを牽引。

 

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