要約
企業情報を読むとき、投資家がAIを使う場面が広がっています。AI可読性とは、PDFやWebページから文章や数値を取り出した後も、対象期間、単位、注記、出典などを一緒に確認できる状態です。この記事では、専門的な仕組みには踏み込まず、AI可読性の観点からまず確認すべき6つのポイントを紹介します。
執筆:サステナブル・ラボ編集部
この記事で分かること
- AI可読性が注目される背景
- 人には読めても、AIには伝わりにくい例
- AI可読性の観点から確認すべき6つのポイント
なぜ今、AIにも読みやすい開示が必要なのか
投資家が企業情報を読むときに、AIを使う場面が広がっているためです。PwCの「Global Investor Survey 2025」(26か国・地域の投資専門家1,074人を対象)では、62%が企業の提出書類や決算説明会の記録の分析にAIを使っていると回答しました。これは世界調査であり、日本企業だけを対象とした数字ではありませんが、「企業情報を読む主体が人だけではなくなっている」ことを示しています。
金融庁の「報告書インスタンス作成ガイドライン」によると、EDINETでXBRLの対象となる有価証券報告書などは、インラインXBRL形式で提出されます。同ガイドラインは、こうした開示書類を提出する際の報告書データの作成方法を示しています。AI可読性と同じ意味ではありませんが、企業開示を機械で扱える形にする考え方は、すでに制度実務の中にあります。
問題は、文字を取り出せても、意味まで正しく伝わるとは限らないことです。例えば女性管理職比率が「32%」と書かれていても、対象年度、集計対象、計算方法が離れた場所にあると、その数字だけが切り取られるおそれがあります。
この記事でいうAI可読性とは、PDFやWebページから文章や数値を取り出した後も、対象期間、単位、注記、出典、最新版を一緒に確認できる状態を指します。特定のAIや評価基準に合わせることだけを目的とするのではなく、企業が伝えたい情報の意味を保つための考え方です。
人には読めても、AIには伝わりにくい例
AIはPDFやWebページから文章や数字を取り出して使います。ただし、2段組みのPDFや複雑な表では、読む順番が崩れたり、数字と単位・注記が離れたりすることがあります。見た目では近くにある図表や脚注も、取り出したデータでは本文から離れる場合があります。
表も、数字だけでは意味が分かりません。例えば女性管理職比率なら、年度、単位、集計対象、計算方法がそろって初めて比べることができます。
AI可読性の観点から確認すべき6つのポイント
この6つは、AIの性能を採点するためのものではありません。PDFやWebページに移したときに、数値、条件、注記、出典のつながりが切れていないかを確かめるために使います。
以下の6つのポイントで確認し、年度や単位、注記が分かりにくい箇所があれば、何が分かりにくかったか、正しい情報をどこで確認したか、どこを直したか、次回も確認するかを校正メモに残します。
| 確認ポイント | 何を確認するか | 問題があったら確認するもの |
| 本文をコピーできるか | PDFの文章をコピーしたとき、文字化けや抜けがないか | 元の制作データ |
| 正しい順番で読めるか | 見出し、本文、注記が正しい順番で続いているか | 原稿 |
| 表だけで意味が分かるか | 見出し、単位、年度、集計範囲、注記がそろっているか | 元データと計算ルール |
| 図表と説明がつながっているか | 図表の近くから凡例、条件、出典を確認できるか | Webページの設定 |
| 数値や用語が媒体間で一致するか | PDFとWebで、用語、数値、更新日が一致しているか | 更新した記録 |
| 補助データの場所が分かるか | 補助ページやExcelの担当者、最新版、元ページへのリンクが分かるか | 担当者・版・リンクの記録 |
最初からすべての資料を確認する必要はありません。更新や問い合わせが多いテーマから始め、数字の意味が変わってしまう抜けを先に直します。
Excelを補助資料として公開する場合は、担当者、最新版、元のWebページとのつながりを決めておきます。
公開直前ではなく、制作の途中で確認する
確認する場面を4つに分けると、制作工程に入れやすくなります。
- 原稿作成時:主な指標の名前、対象範囲、単位、出典をそろえる。
- 制作会社へ渡す前:表を画像だけにするか、元データをどこに置くか、Webページに何を補うかを決める。
- 校正時:見た目だけでなく、更新日、リンク、注記の位置、元データの版を確認する。
- 公開後に更新するとき:古い数値やURL、関連資料をどう扱ったか記録する。
これらの確認作業は担当者を増やすことが目的ではありません。1つの数字を変えたとき、どの資料とリンクを直すか分かる状態にします。制作会社や社内の担当者へ依頼するときも、「AIに読めるようにしてください」ではなく、「この表は単位と集計範囲もコピーできるか」「数字を更新したら、どのリンクを直すか」のように、確認できる言葉で伝えます。
まとめ:人にもAIにも、意味をたどれる情報にする
AI可読性の目的は、特定のAIや評価基準に合わせることだけではありません。文章や数値を取り出した後も、対象期間、単位、注記、出典、最新版を確認できるようにすることです。すべての資料を一度に見直すのではなく、次回更新予定のテーマを1つ選び、PDF、Webページ、表、注記、出典を集めて6つのポイントで確認します。分かりにくかった箇所を直し、次回の校正項目として残せば、改善を続けやすくなります。
自社の開示データ管理とAI可読性を見直したい場合は、サステナブル・ラボまでご相談ください。現状の媒体構成と制作・更新フローに即して、点検範囲を整理するところからご相談いただけます。
————————
参考文献







