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2026年コーポレートガバナンス・コード改訂案|企業は何をすべきかを解説

2026年2月26日、金融庁より「コーポレートガバナンス・コードの改訂案」が公表されました。2015年のコード適用開始から約10年、前回2021年のコード改訂から5年が経過し、各社でガバナンス体制の整備が進んでいます。一方で、中長期的な企業価値向上に向けたガバナンスの「実質化」が新たな課題となっています。

本記事では、「何が変わるのか」「自社にどのような影響があるのか」「何から着手すべきか」を短時間で把握できるよう、今回の改訂案のポイントを整理します。

※2026年2月26日公表のコーポレートガバナンス・コード改訂案に基づき執筆しています。今後、正式な改訂内容が確定する際には内容が変更される可能性があるため、最新の公式情報をご確認ください。

 

 コーポレートガバナンス・コード改訂案が発表された背景

コード策定から約10年、形式から「実質化」への転換

2015年のコード適用開始以降、日本企業のコーポレートガバナンス体制は外形的には大きく進展しました。2025年時点で、プライム市場上場企業の98.8%が独立社外取締役を3分の1以上選任しており、指名委員会の設置企業は91.3%、報酬委員会の設置企業は93.1%に達しています。 しかし、形式的な体制整備が進んだ一方で、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を真の意味で実現するためには、形式にとどまらない「実質化」への転換が急務となっています。

独立社外取締役を3分の1以上・過半数専任する企業の推移比率
金融庁「コーポレートガバナンス・コードの改訂に関する有識者会議(令和7年度第2回)」の資料2 事務局参考資料をもとにサステナブル・ラボ作成

企業と投資家の間に存在する「課題認識のギャップ」

企業と株主の対話件数は増加傾向にあり、2024年には8,000件を超えましたが(※1)、企業側と投資家側の間には課題認識の大きなギャップが存在しています。 たとえば、日本企業の総資産に対する現預金比率は約16〜18%で推移していますが、投資家の82.4%が企業の「手元資金」を「余裕のある水準」と見ているのに対し、企業側の多くは「適正」と捉えています。
(※1)GPIFの運用受託機関による日本株エンゲージメントにおける対話件数

手元資金の水準に関する企業と投資家の認識のズレ
金融庁「コーポレートガバナンス・コードの改訂に関する有識者会議(令和7年度第2回)」の資料2 事務局参考資料をもとにサステナブル・ラボ作成

さらに、投資・財務戦略において、企業側は「設備投資」を重視する傾向がありますが、投資家側は「IT投資」や「研究開発費」「人材投資」といった無形資産への投資をより重視しています。

また、サステナビリティの取り組みに関しても、企業側は52.6%、投資家は66.7%が経営計画に「一定程度連動している」と回答している一方で、「あまり取り組みが連動していない」という回答においては、企業側の7.5%に対して、投資家側は27.6%と認識のギャップが大きくなります。

この認識ギャップを埋めるための対話と開示が強く求められているのです。

改定案のポイントとは?

今回の改訂案では、形式的な対応から脱却し、企業と投資家の建設的な対話を促すための重要な変更が行われました。数値を交えながら5つのポイントを見ていきましょう。

①「スリム化・プリンシプル化」と「序文」の新設

現在、プライム市場上場企業の98.8%が独立社外取締役を3分の1以上選任するなど、形式的なガバナンス体制はほぼ定着しました。しかし、真の企業価値向上には至っていないとの声もあります。そこで今回は、細かなルールベースではなく、原則主義(プリンシプルベース・アプローチ)への立ち返りを促すため、重要項目を原則に格上げしつつ、法令と重複する箇所などを削除する「スリム化・プリンシプル化」が行われました。また、新たに「序文」が追加され、各企業が自社の状況に応じた「丁寧なエクスプレイン(説明)」を行うことの重要性が明記されています。

②現預金の有効活用と経営資源の適切な配分

日本企業の総資産に対する現預金比率は長期間増加傾向にあり、約16〜18%と米国や欧州の企業と比較しても高い水準で推移しています。実際、投資家の73%が「自社の最適B/S(貸借対照表)の検討・見直し」を課題と捉えているのに対し、それを実施している企業は20%にとどまり、両者には大きなギャップが存在します。
今回の改訂案では、取締役会に対して、現預金を投資等に有効活用できているかを含め、現在の経営資源の配分が適切かについて不断に検証することが求められました。

③サステナビリティ開示の統合

これまでコード内に分散していたサステナビリティ関連の規定が統合・整理され、取締役会の責務として明確化されました。また、多様性の面ではプライム市場の女性役員比率(取締役、監査役及び執行役)が15.6%まで増加していますが、引き続き多様性確保の考え方や測定可能な目標の開示が原則として格上げされています。

④取締役会事務局の機能強化と社外取締役の実質化

独立社外取締役については、単なる員数合わせではなく「質」の確保が強調されました。プライム市場において独立社外取締役を過半数選任している企業は26.2%にとどまるのが現状です。改訂案では、経営陣に対する監督や少数株主の意見反映など、独立社外取締役に求められる役割・責務が明確化されました。同時に、社外取締役の機能発揮をサポートし、会議の運営を能動的に行うためのハブ組織として、「取締役会事務局(コーポレートセクレタリー等)」の役割・機能が解釈指針に明記されています。

⑤有価証券報告書の総会前開示と政策保有株式の厳格化

投資家との建設的な対話の前提となる「有価証券報告書の定時株主総会前の開示」が原則に新設されました。実態としても、日経225構成銘柄のうち81.2%が既に総会前開示を実施しており、前期の10.5%から急増し急速に一般化しています。また、市場全体の時価総額に対して9.7%を占める政策保有株式については、取引縮減を示唆するなどして売却を妨げる「売らせない圧力」の禁止や、経済合理性の検証が、補充原則から原則へと格上げされ、より厳格な対応が求められています。

 【実務対応】事業会社が2026年に向けて準備すべきアクション

自社の「価値創造ストーリー」をどう説明するか

今回の改訂では、プリンシプルベースに立ち返り、形式的な「コンプライ・オア・エクスプレイン」ではなく、各社の状況に合わせた「丁寧なエクスプレイン」を行うことが強く求められています。
企業は、中長期的な成長に向けた観点から投資を行い、自社の「価値創造ストーリー」を構築して説明する必要があります。自社の価値創造ストーリーを「上の句」として示し、「下の句」として株主と対話を行うことが重要になります。形式的なひな型開示を脱却し、自社の資本コストを踏まえた具体的な経営戦略や経営資源の配分について、投資家に分かりやすく語る準備が求められます。

IR・サステナビリティ・経営企画の社内連携強化

2027年3月期から一部企業で適用が始まるSSBJ基準への対応や、有価証券報告書の総会前開示の推進など、実務担当者の開示負担は増加することが予想されます。 これに対応し、価値創造ストーリーを社内横断的に構築するためには、IR、サステナビリティ、経営企画などの社内部門間の連携が不可欠です。また、今回解釈指針に明記された「取締役会事務局」が関係部署のハブとなり、監督と執行をつなぐコーポレートセクレタリー(カンパニーセクレタリー)として機能を発揮するような社内体制の構築も、有効なアプローチとなります。

まとめ:コンプライアンス対応から「攻めのガバナンス」へ

コーポレートガバナンス・コードは、経営陣を縛るためのルールではなく、果断な意思決定や適切なリスクテイクを後押しするための「攻めのガバナンス」を実現するものです。
今回の改訂を機に、企業は「ルールだから守る」という受け身の姿勢から抜け出し、中長期的な企業価値向上を目指して能動的にガバナンス改革を進めることが期待されています。日々の実務に追われる中でも、自社にとって真に必要なガバナンスの姿を問い直し、投資家との建設的な対話を深めていくことが、今後の持続的な成長への鍵となるでしょう。

(参照情報)
「コーポレートガバナンス・コードの改訂に関する有識者会議」(令和7年度第2回)議事次第-会議資料
https://www.fsa.go.jp/singi/revision_corporategovernance/siryo/20260226.html

 

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