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ESGレポート

2023年注目の5つのESGトレンド

目次

1)ESGレーティングに対するアプローチの変化|ESG格付への関心の低下

2)ESGデューデリジェンスの強化 | ESG人材不足の激化

3)環境は気候変動から自然資本へシフト

4)人的資本開示義務に伴いDEIが加速

5)守り(ESG)から攻め(インパクト)のサステナビリティ推進

2022年はESGへの注目度が高まった一年となった。欧州を中心にESG規制が加速・強化されるなか、ウクライナ危機を受けてエネルギーの価格高騰が長期化、様々なグリーンウォッシュ事例、反ESG運動の拡大などの逆風も続いている。米Morningstarによると2022Q3(7月-9月)における ESG資金流入金額は$22.5bn。前四半期対比($33.9bn)では減速が見られるものの、非ESG資金とは違いポジティブトレンドは維持。2月に発表される2022Q4の資金状況に注目する。

ただ、下記のGoogle Trendによると、ESGへの関心度は引き続きポジティブトレンドが続いている。2023年も世界のESG関連法規制・政策動向が加速するなか、今回はサステナブル・ラボが最も注目しているESGトレンドを紹介したい。

Google Trend:「ESG」関連キーワード検索の動向 出所:Google

 

1)ESGレーティングに対するアプローチの変化|ESG格付への関心の低下

運用会社や発行体がESGを取り入れた価値創造戦略・リスク管理への関心は引き続き強い。

①重要課題を特定・評価・管理し、②グローバルメガトレンド(脱炭素化、労働力不足など)と経営戦略の整合性を理解し、③オポチュニティーの発掘、④リスク軽減に務める姿勢は我々が対話している幅広い投資家や企業に見られる。

ESGインテグレーションのレベルには大きなバラツキがあるものの、新しいデータや分析ツールを取り入れることでをアルファ創出、経営戦略・投資ポートフォリオのサステナビリティ推進など、独自のバリュー・目標にあった経営判断・投資判断の材料が増え、浸透しつつある。また、ESGインテグレーションもより幅広いアセットクラスに適用するニーズが高まっていると認識。これまで、不動産セクターでは、物理的な環境要件などを満たす目的でデータ収集が行われていたが、今後は気候・社会リスクを軽減するため、不動産資産の所有者から管理者・投資家へ、より広範囲で有意義なESG課題の把握が求められるようになっている。

2022年は投資のスクリーニングプロセスにおいて、ESGレーティングが広く採用されるようになったことを確認。ESG格付けは、広範な外部影響の把握・管理、そして開示するためには有効な出発点である。ただ、多くのレーティングメソドロジーが不透明であること、ESG評価の相関性が低いことから、本質的なサステナビリティ推進のためのKPIとして向いていないという理解が投資家や発行体の間で高まり、独自のESG指標や評価モデルの開発へのニーズが強まっている。

2)ESGデューデリジェンスの強化 | ESG人材の人手不足の激化

運用会社や発行体が、以前よりグリーンウォッシュリスクに直面。開示規制の強化や投資家のニーズによって、データアベイラビリティが徐々に改善されつつある。また、その開示データの信憑性が確認できるオルタナティブデータや多面的な分析ツールも増加。今後、金融商品のESG報告や発行体の統合報告書等には「グリーン」「社会貢献」など曖昧な言葉だけではなく、具体的なKPI・目標設定、および進捗状況に関する説明が、幅広いステークホルダーから一層求められるだろう。また、KPIと財務パフォーマンスの関連性の分析にも高い関心が持たれると予想。

規制強化、高まるステークホルダーの関心に対応するため、今後はより高度なESGの分析・説明ができる人材が求められる。

具体的には、財務・サプライチェーン・環境・人的資本・ガバナンス/経営に関する幅広いノウハウに加え、グローバル最新トレンドにも対応できる言語力とマルチステークホルダーとのプロジェクトを推進できる高度な人材へのニーズが高まる。また、このニーズに外部からの人材採用だけでは対応が困難であることから、ESG研修・トレーニングなどの需要増にも注目だ。

3) 環境は気候変動から自然資本へシフト

投資家や金融機関が独自のネットゼロの約束を実行し始め、Scope3排出量への取り組みが活発化するなか、2023年3月には、より具体的な生物多様性に関するKPIが明確化されたTNFDのベータ版アップデートが控えている。TCFDに続き、一部の上場企業はTNFDに沿った開示・評価を開始する。

また、2022年は多くの業界で過去のデータや損失が将来のリスクを特定するのに不十分であることが明らかになった。特にエネルギー、素材(鉱業)や食品関連(農業)など、炭素移行リスクに大きくさらされる業界はより具体的な移行計画の開示圧力に直面している。2023年も投資家、取引先、従業員などからレジリエンスが評価されるトレンドは続き、気候変動に伴う資源不足や生物多様性、社会的影響など、バリューチェーンを通じて直接的・間接的に生じる複数リスクへの多面的な対応が評価される。

)人的資本開示義務に伴いDEI(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)が加速

23年度から日本の上場企業に対して、人的資本に関する情報開示が「人的資本可視化指針」に伴い義務付られる(内閣官房が策定・公表)。国内外の基準(ISO30414等)に基づき、比較可能なかたちで人的資本への投資や人材戦略との関係を中心に開示が求められる。

特に女性管理職比率、男女報酬差の開示等が注目されると予測。ステークホルダーへDEIに関する進捗の開示圧力が強まることに加え、優秀な人材のパイプラインを確保するためには、DEIをより一貫して理解した経営戦略の推進と説明能力が評価されると予想。

5)守り(ESG)から攻め(インパクト)のサステナビリティ推進

インパクト投資は財務的リターンとともに、社会的、環境的にポジティブで測定可能なインパクトを与えることを目的にし、ESG投資(財務パフォーマンスに影響を与える重要なE/S/G課題の特定・評価・管理)とは大きく概念が異なる。ESGインテグレーションのベストプラクティスがまだ確立されていないなか、多くの金融機関・企業で、リスク管理を超えた本質的なサステナビリティ推進への関心が高まっていることを確認。

今後、ESG評価モデルと同様、多くのインパクトモデルが乱立することを予想。弊社としては、サステナビリティの定義が多面的であり、そのため複数モデルが混在することはポジティブと捉え、ESGインテグレーションと同様に、独自のバリュー・目標にあった経営判断・投資判断の材料になるモデルの開発を重視する。

インゴ ティートベール(Director of ESG Research and Solutions)
京都生まれ、ドイツ育ち。大学院卒業後、SMBC日興証券に入社し、M&AやIPO関連業務に従事。その後、モルガン・スタンレーに移り株式調査部で証券アナリストを務める。アディダスで経営企画・財務分析のマネージャーを務めた後、当社に参画。当社のESGソリューションを牽引。

■金融機関・コンサルティングファーム向け非財務データバンク
「TERRAST(テラスト)β」

■事業会社向け、ESG/SDGsの見える化ツール
「TERRAST for Enterprise β(T4E)」

 

 



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