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ESGレポート

【自動車業界のESG】EV販売比率とガバナンス・ダイバーシティの相関

弊社のESGソリューションをけん引するインゴ ティートベール(Director of ESG Research and Solutions)による自動車業界の気候変動対策に関する分析をお届けします。

サマリー
自動車業界においては、厳しい燃費規制への対応として、電気自動車(EV)の販売比率が注目されている。弊社プロダクト「TERRAST β」を用いて、EV販売比率ともっとも相関性が高い非財務指標を独自分析した結果、ガバナンスやダイバーシティ関連の指標が多いことが明らかとなった。足元ではEV比率は企業価値にも直結し、研究開発リソースに加え、多様な経営陣・ガバナンス体制が競争優位性のカギを握っている。

EV販売の伸びが、CO2排出量削減に寄与

2022年9月に欧州環境庁(EEA)が各自動車メーカーの2020年平均CO2排出量データをリリース。平均CO2排出量は107.5g/kmと2020年目標95gを大幅に超過したものの、前年比12%減。’15~19の120g/km前後にとどまっていた水準から大幅に改善。
主要因は電気自動車(EV)の販売シェアが3.5%(2019年)から11.6%(2020年)に上昇したこと。自動車の販売台数は全体的に減少したものの、EV販売台数は55万台から132万台に増加した。
ただ、CO2排出量の削減スピードが遅い要因は不変。①燃費が低いSUV販売比率が高水準で推移していること、②電気自動車が高価格であり、販売促進には多額の補助金が必要となっていること、③電気自動車用の充電網の拡充が遅れていることなど。

欧州自動車の年平均CO2排出量の推移と目標値

出所:欧州環境庁(EEA)

米Teslaが独走、続くトヨタ、PSAもトップ争い

メーカー別では、平均CO2排出量目標値をクリアしているのはEVメーカーの米Tesla社(0g/km)のみ。その他大手メーカーではトヨタグループが97.5g/km、PSA(97.8g/km)がトップを争っている。平均CO2排出はモデルミックス(SUV、ミニバンなどの販売比率)に加え、電気自動車販売比率が大きく影響しているため、欧州燃費規制への対応はEVモデル販売台数とEVモデル拡充がカギを握り、各社のバリュエーションにも直結している。

各種メーカー別の平均CO2排出量とEV比率

出所:JATO Dynamics、欧州環境庁(EEA)、サステナブル・ラボ「TERRAST β」 注:EV比率はプラグインハイブリッドを含む

ガバナンス×ダイバーシティがEV開発を後押し

足元では、EVへの開発リソースと生産能力拡大に伴う設備投資を支えられるキャッシュフロー総出力に加え、多様なガバナンス体制が企業の競争力を大きく左右していると推察する。今回、弊社プロダクト「TERRAST β」を用いて、EV販売比率ともっとも相関性が高い非財務指標を独自分析した結果、ガバナンスやダイバーシティ関連の指標が多いことが分かった(独立取締役比率、CEO/代表取締役の年齢、女性取締役比率など)。現在、EV比率が高い自動車メーカーは、多様性のある経営陣によって、開発リソースを早期にEV開発へシフトする決定が出来た恩恵を受けている可能性が高い。

自動車業界の独立取締役比率とEV比率の相関性

出所:JATO Dynamics、サステナブル・ラボ「TERRASTβ」

今後、ロシア・ウクライナ戦争によりリチウムを含めた鉱物資源価格が高騰し、外部環境による不安要素が増加している中、ますます自動車メーカーのガバナンス体制と研究開発の動向に注目したい。

直近の日系自動車メーカーのEV動向

・2022/09 日産・三菱自動車、軽EV2割増産 国内EV販売の5割に
・2022/08トヨタ、EV向けに7300億円投資 電池確保にアクセル
・2022/08スズキ、トヨタとインドでEV 25年までに発売
・2022/08ホンダ、LGと初のEV電池工場 アメリカで6100億円投資
・2022/06ソニー・ホンダのEV新会社、折半出資で年内設立
・2022/05 スズキ、インド投資3500億円 選択と集中でEV化に備え
・2022/02 日産、エンジン開発終了へ
・2021/12トヨタ、30年までにEV投資4兆円 欧米勢を猛追

インゴ ティートベール(Director of ESG Research and Solutions)

京都生まれ、ドイツ育ち。大学院卒業後、SMBC日興証券に入社し、M&AやIPO関連業務に従事。その後、モルガン・スタンレーに移り株式調査部で証券アナリストを務める。アディダスで経営企画・財務分析のマネージャーを務めた後、当社に参画。当社のESGソリューションを牽引。

 



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